スマートフォンやタブレットの普及に伴い、一般化してきた「紙の電子化」。
私も電子書籍としてAmazonのkindleを利用したり、紙の本や書類をスキャナでデータ化しています。
では、同じく紙媒体の「楽譜のデータ化」は可能なのでしょうか。
単純に楽譜をスキャンして電子化することは簡単ですが、本気で実用を考えた場合の課題を考えてみました。
ところで、楽譜を電子化するメリットは?
楽譜も紙なので、データ化した時のメリットはたくさんあります。
本や書類を電子化したときのように、いつでもどこでも大量のデータを見ることができます。
データなのでそれを表示するディスプレイなどの媒体があれば、重い冊子を何冊も持ち運ぶ必要はありません。
演奏家たちは、いつも大量の楽譜と楽器を持って移動しているので、楽譜が少なくなるだけでもとても活動がしやすくなることでしょう。
インターネットを通じて、離れたメンバーに配布するなどできれば、早く練習にとりかかることもできるようになります。
紙と違って劣化することなく、バックアップさえ取っていれば半永久的に存続させることができます。
楽譜の代わりにタブレットを使ってみたときの課題
メリットの反面、楽譜を電子化しようとすると書籍以上にたくさんの課題があります。
ここでは主にクラシックの演奏家を想定して考えてみたいと思います。
・自由に書き込むのが難しい
楽譜には練習時に、自分が注意したいことや、他の演奏者からの指示を書き込んだりすることがあります。
現在でも、PDFに書き込みをするのと同じような方法で書き込みができるかもしれませんが、紙と同じような細かい書き込みは困難です。
・バッテリー切れが致命的
ステージで利用した場合に一番ありがちで怖いのは、電池がなくなってしまうことです。
特に、完全に暗譜をしていない状態で、本番中に楽譜が見えなくなってしまったら・・・考えるだけでも恐ろしいですね。
これを予防するには予備電源を内蔵したり、有線で電源を確保するなどの対応が必要になります。
・故障やソフトのトラブルも致命的
それでも、まれに起こるOSやアプリの不具合でフリーズしたりページが飛んだりすることに対しては無策です。
OSが再起動してしまえば、復旧に数秒から数分ほどかかってしまいます。
代わりの機械を隣に置いて、同期を取っておきましょうか?これでは大げさすぎますよね。
紙は突然なくなったりすることはありませんが、データの場合は故障やトラブルで表示がされなくなってしまうことがあるので、とても大きなリスクを抱えることになってしまいます。
・画面のサイズ問題
他にも、現在のタブレットなどでは表示が小さすぎるという物理的な問題があります。
A3が実寸で表示できる24インチ程度のタッチモニターを用意できればよいですが、現在それほど大きなモニターはあまり薄型化されておらず、持ち運びはかなり難しくなりそうです。
たとえそれが可能になったとしても、現在の「紙の状態のものをモニターに表示させる」以上の革新は出てきそうにありません。
現在でも技術的には可能ですが、実際に利用しようとするとたくさんの課題を解決しなくてはなりません。
学習や練習用には十分活用できると思いますが、ステージでの利用はなかなか難しそうです。
「電子楽譜」として新たな革新を望みます
最初に挙げたような、単純に「紙をデータ化する」という考え方では、初期の電子書籍と同じように大きな革新はおこりません。
「”紙”をモニターに表示させる」という考え方そのものを変化させて、電子用の楽譜のあり方を探る必要があります。
kindleのように、専用のアプリで、専用のデータ形式(楽譜作成ソフトから派生するかもしれませんが)のようなものが普及すれば実用的なものが出てくるかもしれません。
「電子楽譜」として、ページをめくるのではなく演奏者に必要な部分だけをリアルタイムに表示できたり、パート譜をすべて表示させて書き込みを共有できたりなど、演奏者の思考を助けるようなものができると面白いと思います。
そのためには、演奏家の方も、パラダイムシフトをする必要がありそうですね。
うーん、これ、商用化できるかなぁ。
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