先日、「佐賀県の高校のIT活用についてのブログが閉鎖予定」というニュースをみました。
私は父が元高校の教員で、自身がITのプロフェッショナルの現場にいる私には、とても興味を引かれる内容でした。
最初にiPadが発表された頃を起点として、教育現場へのパーソナルガジェットの導入(主にタブレット)がたびたび話題になるようになりました。
しかしこれは集団行動を原則とする教育現場で、足並みを揃えてITを使わなければならないという、とてもとても高いハードルを超えなければならないという課題があります。
■教育現場のIT活用を綴ったブログ
ITを活用することで学習効率をあげようという施策の一貫で今年から導入された新入生全員にタブレットPCを持たせ授業を行ったところ、トラブル続きな日々を綴ったブログがありました。
記事と、ブログの内容も拝見して、感じることがたくさんありました。
ブログオーナーは素性は詳しくは書いていませんでしたが、教員の方が書いたのだと思います。
・授業中にソフトのインストールに失敗して授業にならない
・PCを立ち上げるのに5分、忘れた、起動しないなどのトラブルがあると代替を出すのでさらに15分・・・etc
学習効率を上げるどころか、授業の時間を使ってIT運用管理をしている状態で、あまり好意的ではないような記事が多かったという印象でした。
■ITのプロから見た「ITにトラブルはつきもの」という視点
私は実際にITの現場で働いていて、集団IT教育も受けたことがありますし、教育する側に立ったこともあります。毎日ITを活用していてIT業界で働いているので、このあたりの難しさはよくわかります。
1台のPCでも、マニュアル通りに動かないことが多々あって、個別に対応方法を考えないといけなかったりする状況なのに、40台もPCが並べられた教室で、ITのプロフェッショナルではない先生と、生徒が足並みを揃えてPCを使うということは、かなりハードルが高いと感じてしまいます。
ITに詳しくない方は疑問に思われるかもしれませんが、同じ環境や同じ指示をしても、マニュアルどおりに動作しないケースというのが、それなりに発生します。
さらに、採用されているのは市場に出回って数年のタブレットPCで、しかも省電力モデルのPCでパフォーマンスも決してよいとは言えないCPUを搭載したもの。
ソフトウェアのインストールだけをとっても、普通CPUの速さや無線環境、ダウンロード参照元のサーバの性能でインストールできる時間は遅くなりますし、マニュアル通りにいかないことは度々あります。
■最大の課題は「一つのトラブルが全体に影響してしまう」こと
会社などで使っているシステムは、大規模なものになるとほとんど自動でアップデートの仕組みがあったり、リモートで対応する専門の部署を設けてあったりしますが、なにより個人が仕事中の合間を見つけて個別に対応するので、「一つのトラブルが全体に影響する」ということはほとんどありません。
学校は集団行動が原則なので、先生がトラブルに対応するとなると授業全体が止まってしまうということが考慮されていない(されていないことはないと思いたいのですが)のが一番の問題点だと思います。
ソフトウェアは事前にすべて動作確認をした上で配布したり、使うところを限定して全体のリテラシーが上がったところで範囲を広げていくなどの対応が適切なのではないかと思います。
いくらPCが一般的になったからといっても、急にやり方を変えるのは一筋縄ではいきません。
会社や自治体などにPCを導入したときにも、ワープロの移行から始まり、メールやファイルサーバなど少しずつITが浸透していったはずです。
そのことを忘れてしまって強引に「えいやー」でやろうとしているように感じてしまいました。
今後もIT活用という視点で、教育現場の動向はチェックしていきたいと思います。
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